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ただ、ヘリコプターの音が機内に響いた。
さっきまで「落ち着け」と叫んだ操縦者も、一言も言わなかった。
ふと窓の外を見る。
島はもう、
なかった。
「何で・・・。」
涙を流し、策弥が呟く。
「何で、俺達だけなんですか・・・。」
「・・・・。」
「何で、俺達だけ生かされているんですか。何で、皆は知っているんですか。何で、俺たちは知らされていないんですか・・・・。」
策弥の必死の言葉に、俺は眼を伏せる。
胸倉をつかみかかる策弥を見て、ズボンの太ももあたりを強く握る。
手は震え、下唇を噛みしめる。
じわじわと鉄の味が口の中で広がるが、お構いなし。
何もかも破壊したい衝動にかられた。
徐々に離れていく島があった場所。
言葉が出なかった。
真っ青な海がただただ広がっていた。
「降ろしてください!・・・お願いします、降ろしてください・・・。俺も、父さんたちと死・・・・」
高松さんのシャツを握る手が弱まる。
頭を徐々に下げ、最後の方は嗚咽でよく聞き取れなかった。
うざいくらいに晴天。
この時だけ、太陽を恨んだ。
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