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「なぁ、アイドルって何だ?」
同じ顔をした双子の弟、守木策弥、が俺に聞いてきた。
俺は、「そうだな~・・・・。」と天上を仰いだ。
そして、さりげなく、目もとを拭う。
「皆の前で踊ったり、歌ったり、夢とか与える職業だって、おっさんから聞いたぞ。」
「夢を与えるって、どうやって?」
はい、きた。
策弥の質問攻撃。
次から次へと、疑問を俺に投げかけてくる。
もう、十数年も一緒におりゃ、分かっている事だけど、彼の質問攻撃は、彼が納得するまで終わらない。
それが、一日だろうが、一月だろうが、だ。
俺は、ズビッと鼻をすすった。
「だから、踊ったり、歌ったりして」
「それで、夢を与えるの?」
「・・・・。」
答える途中だったのにも関わらず、策弥は疑問を投げかけた。
そして、俺は思わず口を閉じた。
的確な答えを言える自信はなかった。
むしろ、逆。
適切な答えなんて、この世に存在するのだろうか?
アイドルは夢を与えるなんて、誰が決めたんだ?
むしろ、アイドルって何だ?
それは、こっちも聞きたいくらいだよ。
俺は苦渋の判断で「知らない。」と答えた。
未だに不満そうな顔をする弟を一瞥し、「俺だって知りたいぐらいだ。」という台詞を生唾と共に喉の奥へと飲み込む。
ゴキュと鈍い音が喉から聞こえた。
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