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窓の外は、まるでオレンジ色のクレヨンで一面を塗ったような空だった。
俺たち二人は、全く知らない場所のソファーにひっついて座っていた。
本当に、知らない土地。
唯一分かることは、ココが新しい家って事だけ。
おっさんが、死んだ。
この事実が、重く俺ら双子に押しかかった。
いや、襲いかかり、重く俺らにのしかかったと言った方が、良いかもしれない。
いつもなら笑顔が眩しい弟の顔が、涙でグショグショに汚れ、眩しさのかけらもなかった。
けど、策弥は沈黙に耐えられない性格なのは、既に承知の上。
多分、この重い沈黙を打破しようと、やっとこさ出てきた言葉が「アイドルって何?」だったのだろう。
隣に座る策弥が微かに動いた。
多分、長時間同じ体制だったからなのかもしれない。
さりげなく足の裏を押しているのを、視界の隅でとらえた。
そりゃ、しびれるわ。
何時間も、この空間で、お前とこの距離を保って。
動かず。
ただ、ひたすらに、時間が過ぎるのを待つ。
確かに、俺もこの空気が嫌いだ。
虚無感があふれるこの空気。
もう、この世界に、
そう、この美しい世界に、おっさんがいない。
皆がいない。
俺達を知っているのは、俺達と翔太さんだけ。
孤独感。
孤立感。
これらが重く圧し掛かるこの空気を、俺、いや、俺たちは大嫌いだ。
ズビズビと流れて出る涙と鼻水を必死に堪える。
シーンと静まりかえったこの空間が、気持ち悪い。
なんなら、耳奥でキーンと耳鳴りがする。
気持ち悪い。
逃げ出したい空間に、俺と策弥のふたりぼっち。
それをぶち壊すための、策弥の一言。
「アイドルって何?」
何故、彼がアイドルについて聞いてきたのかには、理由がある。
それは、遡る事、約六時間前のことだった。
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