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「…オイ、蒼太。」
「ん、何?」
声をかけられて蒼太が振り向けば、そこに居たのは先程までの真墨とのやり取りを傍観していた筈の映士。
何やら複雑な表情で蒼太を見詰めながらセロリをかじっていた。
「その、なんだ。…真墨をからかうのも大概にしとけよ?じゃないと…仕事にも影響が出そうなんだが。」
「だーって楽しいんだもん。それに…」
「それに?」
思わせぶりに言葉を切る蒼太に、映士は先を促す。
「こわーいお兄さんが色々と自覚する前にコトが済めば、手出しされる事も無くなるでしょ?」
「…お前、ホントに怖い奴だな。」
「そうかなー?僕くらいの好青年、他には中々居ないと思うんだけど。」
「……。」
映士は蒼太の瞳に『スパイをしていた』という彼の過去を感じ、少し身震いして自分が当事者でない事を、柄にもなく神様に感謝したのだった。
…後日、映士がその『当事者』に頑張れよ!という真墨にとっては脈絡が無く意味も分からない言葉とともに、大量の野菜を差し入れしていたのは。
映士なりの優しさだったのだろう。
【怖いお兄さんは如何ですか?】
(彼の本心は)(彼自信にも)(不明なのかもしれない。)
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