藤岡 悠斗

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なんせマスターは口が上手い。 更に顔もいい、確かにシワが目立つ様になっているが、とても40代後半には見えない。 「マスター、今日もこの時間帯は俺らの貸し切り?」 「バカ言え、お前の目は節穴か?」 店内をぐるっと見渡すと、店の1番奥、目立たない隅っこに1人の女性客が居た。 雪の様に白い肌。 紅は乗っていないが、形の良い唇。 アーモンドの様に整った形をしている、猫の様な目。 腰まで伸ばしてある少し癖のある、漆黒の髪。 彼女を見た瞬間、何か電流の様なものが俺の中を走った。 早苗が肩を叩いてる事に気付けない程、彼女に目を奪われた。 「もぉっ!! ジロジロ見たら失礼でしょぉ? 付き合って4日目で浮気する気ぃ~?」 早苗が耳元で怒鳴っているのを聞いて、ようやく彼女から目を離した。 「いや? ちょっとボォーッとしちゃっただけ。」 早苗はあまりギャーギャーわめかないタイプだとおもってたが…。 所詮、女なんて皆んな一緒か。 「どぉ~だか。 あの人、まぁまぁ美人だしね。 でも、悠斗には早苗が居るんだから!!」 「だからそんなんじゃ無いって。」 じぃ~っと上目遣いで俺をみる早苗。 昨日までは色っぽいと思っていたその仕草も、何故か今は浅ましく見える。 「ま、そうゆう事にしてあげる。 その代わり早苗のお願い聞いて?」 「俺にできる事なら。」 「悠斗の家に行きたいな♪」 「それは無理。」 「えぇ~っ!! 何でよ、いいじゃない。」 女ってのはやたら人のプライベートに踏み込んでくる生き物なのか? 自慢じゃないが、俺は彼女や女友達を家に上げた事はない。 sexをするならラブホで充分だし。 何より俺の空間に入ってきて欲しくない。 「また今度な。」 何時もの逃げ文句で何とかこの場を収めようとした。 「ヤダ、今日がいいっ 。 早苗になんか隠したいものでもあるわけ?」 「そんなの無いよ。」 「なら良いじゃない。」 「とにかく、今日は無理だから。」 「もぉ~いいっ!! 早苗、帰る。」 そう言ってスタスタと店を出て行ってしまった。
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