藤岡 悠斗

5/7
前へ
/31ページ
次へ
「相変わらずだな、悠斗。」 「マスターは知ってるでしょう? 俺がプライベートに踏み込まれるの嫌いだって。」 「まぁ、長い付き合いだからな。 でも、これで早苗ちゃんにフラれたらどーすんの?」 「また次を探すさ。」 「最低だな、お前。」 ニヤリとしながら俺を貶すマスター。 「俺ならもっと上手くやったね。」 まだ言うか…。 どうせ俺は切り捨てんのが早い男ですよ。 「そんな事はもぉーいいから。 それよりあの美人さんは常連なの? 見た事無いけど。」 「お前、うちのお客様にまで手ぇ出す気か?」 「気になっただけだよ。」 「ふ~ん…。 あのお客様はお前より長く店に来てくれてるんだぞ? 俺の大切な目の保養。」 目の保養って…。 確かに凄い美人だ。 早苗なんか足下にも及ばない程。 「でも、止めとけ。 お前じゃ無理。」 マスターの言葉に少しムッとした。 今まで女にフラれた事は無いし、他に男がいても最後に選ばれるのは俺だった。 「そんなの、やってみなきゃ分かんないでしょ?」 ビールを持って立ち上がり、名前も知らない美人さんに向かって足を進めた。 美人さんは窓の外を眺めながら、カクテルを飲んでいた。 「さっきはスミマセン。 五月蝿かったでしょう?」 美人さんはチラリと俺を見て「別に。」と一言言って、また外を眺めていた。 「何か珍しいものでも見えるの?」 俺は彼女に聞いた。 「別に。」 またその一言のみ。 今まで声を掛けてきた女は皆んな、嬉しそうに話してくれたんだけど…。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加