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「相変わらずだな、悠斗。」
「マスターは知ってるでしょう?
俺がプライベートに踏み込まれるの嫌いだって。」
「まぁ、長い付き合いだからな。
でも、これで早苗ちゃんにフラれたらどーすんの?」
「また次を探すさ。」
「最低だな、お前。」
ニヤリとしながら俺を貶すマスター。
「俺ならもっと上手くやったね。」
まだ言うか…。
どうせ俺は切り捨てんのが早い男ですよ。
「そんな事はもぉーいいから。
それよりあの美人さんは常連なの?
見た事無いけど。」
「お前、うちのお客様にまで手ぇ出す気か?」
「気になっただけだよ。」
「ふ~ん…。
あのお客様はお前より長く店に来てくれてるんだぞ?
俺の大切な目の保養。」
目の保養って…。
確かに凄い美人だ。
早苗なんか足下にも及ばない程。
「でも、止めとけ。
お前じゃ無理。」
マスターの言葉に少しムッとした。
今まで女にフラれた事は無いし、他に男がいても最後に選ばれるのは俺だった。
「そんなの、やってみなきゃ分かんないでしょ?」
ビールを持って立ち上がり、名前も知らない美人さんに向かって足を進めた。
美人さんは窓の外を眺めながら、カクテルを飲んでいた。
「さっきはスミマセン。
五月蝿かったでしょう?」
美人さんはチラリと俺を見て「別に。」と一言言って、また外を眺めていた。
「何か珍しいものでも見えるの?」
俺は彼女に聞いた。
「別に。」
またその一言のみ。
今まで声を掛けてきた女は皆んな、嬉しそうに話してくれたんだけど…。
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