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しんと静まり返る真夜中、とある敷地内では甲高いブザー音が鳴り響いていた。
室内照明は明滅し、軍靴の硬い足音が廊下を走り回り、銃声までも響き渡る。
「いたぞ、あそこだ!」
「ちっ、やばいな……」
声に誘われ、あちこちから足音が集まってくる気配を感じて、夜闇に同化するような黒服を着た男は、脱出を目指して階段を駆け上る。
もはや、見つからずに逃げ切るのを無理だと悟り、足音を忍ばせることをやめていた。
目指すは屋上。
肩掛けのバッグを小脇に抱え、ひたすら登り行くと屋上への出入り口がようやく見えてきた。
金属製のドアに手をかけると、やはり鍵がかかっていて開かない。
手持ちのアサルトライフルを鍵穴に向け、兆弾に気をつけながらフルオート射撃を行った。
火花が激しく飛び散り、衝撃の凄さを物語る。
階下からは以前飛び交う叫び声と足音。
それは徐々に近づいてくる。
焦りを抑えながら、射撃ををやめて取れかかったドアノブを男は蹴りつけた。
「っ! 開いた!」
即座に屋上に出ると、迎えはまだ来ていなかった。
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