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「よくやった! 捕まえろ!」
命令一下、追っ手が迫るのを感じた男は、這って進みだす。
米粒ほどだった空からの迎えはその形を浮かび上がらせるほどになっていた。
しゃんしゃんと首飾りの鈴を鳴らし、天をかける2頭のトナカイ。
トナカイの引くソリには、白い縁取りの赤い服を着込み、頭には同じく赤い帽子をかぶった男がいた。
「すなまい、遅れた!」
「俺は無理みたいだ! こいつだけ頼む!」
足を怪我した男は自らが助かることを諦め、肩からかけたバッグをトナカイの速度、タイミングに合わせて天に放った。
赤服の男は宙に舞うそのバッグをキャッチした。
「後は頼んだぞ!」
「……任された」
二人は最後の会話を交わした。
「逃がすな! あのバッグを持っていかせるな!」
背に大声を受けながら、赤服の男はトナカイの手綱を操って高度を上げさせた。
天高く走るソリ。
向かう先はいずことも知れない。
追える者はいなかった。
12月23日深夜の出来事だった。
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