第一章

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12月24日 深夜23時05分 消灯の訪れた病院は暗く、そして静かだった。 いつもは明かりが消えるのを合図に眠りに付く少年、小豆沢雄介だったが、この日ばかりは睡魔と闘い、起き続けていた。 個室部屋に在住する雄介は、人目を忍ぶ必要も無くベッドから抜け出し、寒さを堪えながら窓の前で外を眺めている。 寒空はよく晴れ、たくさんの星がちらちらと瞬いていた。 世間ではクリスマスイブ。 病院から見える街並みは煌びやかなイルミネーションに彩られ、賑々しく輝いていた。 すでに待ち続けて2時間。 雄介の顔には若干、諦めの色が生まれてた。 「はぁ……サンタさん、来ないのかな……。お礼言いたいのに」 今年7歳を迎えた雄介は純粋にサンタの存在を頑なに信じていた。 雄介は毎年のようにクリスマスイブを寝ずに過ごそうと試みている。 サンタに会ってお礼を言いたい、と張り切っているのだが、子供ゆえに眠気には敵わず、毎年寝ている間にプレゼントを大き目の靴下に入れられ、クリスマスの朝を迎えるというのがお決まりだった。 今年こそは、と奮闘している最中にある。
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