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夜空は変わらず同じ光景を見せつけるだけで、待てども待てどもトナカイに乗ったサンタクロースが現れる気配が無い。
昼寝を長めに取ってまで準備したのに、雄介には2時間が限界だった。
諦めて寝ようと思った雄介は、ベッドの布団に手をかけた――その時だった。
遠くの空からしゃんしゃんと鳴る鈴の音と、何かが破裂した時のような乾いた大きな音。
二種類の音が聞こえてきた。
「サンタさんだ!」
待ちに待った存在が来たと、雄介は一気に眠気を投げ捨て、窓枠へ飛びついた。
爪先立ちでようやく鍵をあけ、窓を開け放つと、冷えた空気に身体が震えた。
凍えそうな寒さも気にせず、雄介は興奮に身を任せて外に顔を突き出して空を眺める。
首をいっぱいに反らし、見上げた先には、夜空に浮かぶ二匹のトナカイに引かれたソリが、同じく二匹のトナカイに引かれるソリに追われている光景が広がっていた。
前に立つソリには白い縁取りの赤服と帽子をかぶった男が乗り、後ろのソリには黒スーツとサングラスをかけた男が二人乗っていた。
黒服はその手に小型拳銃が握り、時折、夜闇に発砲音と火花と硝煙を散らす。
それに対し、赤服の男は手綱を操り、トナカイにサイドステップを踏ませて小刻みに交わしていた。
アクション映画さながらの光景を前に、雄介はただただ驚くばかり。
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