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丘に立って見上げて
──お父さんとお母さんは、どこ?
幼い自分が言った言葉は、きっと祖父には酷だったに違いない。
祖父自身が悲しいと思ったのもあるだろうが、きっと大半は突然親を失った自分に対する哀れみ。
──お前の親はなぁ、星になってしまったよ。
祖父なりに、内容を優しくしたのだろう。
だから、お前はいつも見守られている。お父さんとお母さんがいつも見守っているから、元気で過ごせよと、祖父は自分の頭を撫でながら言った。
儂らも見守るからとも、言われた。
祖父の言葉の通りに、これといった病気もせず過ごした。
見守られているからと、夜近くの丘に行って夜空を見上げ、涙を堪えた時もある。
どれが父と母だろうと思いを馳せたことも。
さらには、流れ星を必死で探した時期もあった。
父と母から、自分に贈り物をするための流れ星。何かを伝えるための流れ星。
落ちた星を見つけたら、父と母のぬくもりにまた触れることができるかもしれない。
そう思って探した。
今思えば馬鹿馬鹿しい。
思い出せば自然と自嘲の笑みが浮かぶ。
少し考えればわかること。
目の前で刺し殺され、鮮血にまみれ息絶えた両親が、どうやって星になろうか。
自己防衛だったのだろう。そう思わなければ、自分は壊れると、本能で感じていたから。
でも今は平気。
誤魔化すことも目を逸らすこともしない。
しなくても、もう受け止められるから。
大丈夫。
受け止められるから。
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