プロローグ

4/5
前へ
/20ページ
次へ
…………… ………… …… … 彼は椅子に深く腰掛け、足を組んだ。 部屋の中央に浮かぶ球体を見る。 「ソフィア、見てごらん。彼等は『蟻』を飼うのだそうだよ・・?」 傍らに控える少女に向かい声をかけるが、彼女は何もその瞳に映していないのかと言う様な、硝子玉の様な目でひたすら前方のみを見つめ続ける。 「透明の入れ物に、蟻を捕まえて来て入れるんだ。それからたまに餌を与えて、その中の蟻達の生態を観察する。まるで命をその手に握る神様の様にね」 彼はソフィアと呼んだ少女の髪をそっと撫でた。 「面白いだろう? 私たちがこうやって人間を観察し続ける様に、彼等もまた何かを見つめ続けるんだ。ソフィア、考えた事があるかい? 蟻を飼う人間をこうやって我々が楽しんで覗くように、もしかしたら、人間を飼う我々をもっと大きな誰かが覗いているかも知れないよ?」 .
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加