4/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「どうにでもなれ!」 そう言って虚しくなる。 私は空っぽだ。 何にも手にしていない。 私が持っていたはずのものは干からびて砂になってしまったのだ。 もうここを出ようという気力さえない。 出たって私の世界は変わらない。 そう思うと、いっそここに居たいとさえ思う。 私が見ていた幸福は私がみた夢にしかすぎなかった。 自分に都合の良い夢を見て、喜んでいた。 だから目覚めた時に絶望した。 私はあの時の詩織の顔を忘れない。 高校に入った時からの親友だった、あの詩織の歪んだ微笑みを。 私をここに閉じ込めて、笑いながら帰って行ったあの声を。 私は忘れない。 .
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!