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「ねえねぇ、本当に今日はすーごい手え冷たいよ、とらちん。
帰ったら、暖かくしなねー?」
驚いた。
こいつが人を、気遣うなんて。
…俺だから、言ってくれるのか?
…だったら、嬉しいのに。
ああ本当に寒い。
背中が寒さで、ざわざわする。
…でも片手だけ温かい。
…こいつの体温だ。
ああ、山中自身はもっと温かそう。
いつも学校でしてるみたいに、抱きついてくりゃあ良いのに。
寒くて寒くて、でも繋いでいる手だけは温かくて、
頭はものすごくぼーっとして…。
色んなものが重なって、
この頃から俺は、ちょっとおかしかったんだ。
だから、あんな事を言ったんだ。
「山中、寒い。」
「うん、早く帰ろっかー。」
少し早歩きになる。
あー、そうじゃなく。
「寒い、から」
「? うん?」
立ち止まった俺を、不思議そうに山中が見る。
「どしたの? とらちん?」
「えーと…温めろよ、手みたく。」
山中が、目を大きく見開く。
引かれたか?
あー、やばい。本当に頭がぼーっとしてる。
寒い。早く暖めろ。
「俺に今、あっためてほしいの?」
山中が、すごく嬉しそうに笑うから。
俺は、ぼーっとしながらも頷いた。
「ああ。」
早くしろ、と繋いでいる手を軽く引っ張る。
暖めろよ。
お前は今、この手みたいに暖かいんだろ?
「ん、暖めたげるね。」
すごく愛おしそうに、俺を見るから。
繋いでいた手を、また引っ張った。
はやく。はやく。
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