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虐殺を恐れた人々が学校へ集まったのは、そこに国連軍が駐留していたからだ。皆、「国連軍がいるからいざとなれば守ってくれる」、そう考えたのだ。
しかし、虐殺行為が始まっても軍はまったく動こうとはしない。
「我々の使命は『平和の監視』であって『平和の維持』ではない」
彼らは見守るだけで、戦うことはできないというのだ。訳がわからない。なんの為の武器、なんの為の駐留軍なんだ。
しかし、軍人は上の命令がなければ何もできない。彼らは立派な銃を持ってながら、難民を守るために発射できるたった一発の銃弾も持ってはないのだ。
駐留軍の隊長は苦悩する。
彼はベルギー出身の軍人で、彼の祖父は第二次大戦中にナチスから逃れてきたユダヤ人を匿ったことがある。そんな勇敢な祖父を持つことは、彼の誇りであった。
しかし、その彼が今、怯える人々を前にして、ただ眺めていることしかできないのだ。
その内、校門の向こうで転がる死体に野良犬が群がりはじめる。それを見た軍人は、無線で上官に伝える。
「犬が死体を食べている。衛生上問題があるので、犬を撃つ為の許可が欲しい」
彼らの持つ銃は、いったい何の為にあるのだろうか。痩せ細った野良犬を退治する為に存在するのだろうか。彼らはなんの為にそこにいるのだろうか。
ユダヤ人の命を救った祖父を誰より尊敬するその軍人は、今誰一人の命も救えず、ただ野良犬を撃つことしかできない。
本作の原題は「SHOOTING DOGS」。
このオリジナルタイトルは、そこにいた「虐殺を目撃しながら、何一つできなかった無力な人々の姿」を象徴している。
無力な草の根、無力なジャーナリズム、無力な軍隊、そして無力な国際社会、それらはすべて無力な私たちを映し出す鏡なのだ。
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