零段目

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 運命の出会いは常に唐突だけど、私の場合、それは人ではなかった。  後から思えば、何でこんなことをしたんだろうと考えなくもないけど、でも不思議と後悔はない。むしろ今は楽しくて楽しくて仕方がない。それがたとえ、はた迷惑な活動でも、どんなに危険が付きまとうとも止まれない。  たとえば、ハムスターの回し車。中にハムスターが入って、走り出すとくるくる回るアレ。  走っても走ってもカラカラ回るだけで進まず、それでも動かせると信じて早く走っても回し車だけが早く回るだけ。  だけど、不思議なことにハムスターはその回し車を止めることが出来る。  私? 私は――いや、私たちか。  私たちは多分ハムスターだと思う。でも、回し車に乗り駆け出したら最後。ずっと走り続けるだけ。  これはそんな物語。  回し車の止め方を知らず、かと言って止める気もない走り続けるハムスターの物語。  高校一年――五月。 .
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