であい

3/4
前へ
/27ページ
次へ
手に持っていたノートをぼとりと落としてしまった俺を不思議そうに見つめる、声の主。 言い慣れたいらっしゃいませも、ちゃんと言えなかった。 だって、だって… (めちゃくちゃ、かっこいー) 「…山下の代理で取りに来たんすけど」 「え、あ、はい!お伺いしております」 ドキドキとうるさい胸の音を知らんぷりして、いつも通りの対応を心掛ける。 お釣りを返すときに触れた指先とか、少し笑ってくれた顔とか、心地いい声とか。 このまま帰すのも勿体ないけど、どうしていいか分からない。 (ばか!あほ!俺のいくじなし…) そう思った俺に代理の人はぽつり一言。 「また来ても、いいっすか?」 「え、あ…心より、お待ちしております!」 「…ありがと、」 あ、少しあかくなった耳が見えた。 またドキドキ。  
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

574人が本棚に入れています
本棚に追加