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離れてくその人の背中を、さみしい気持ちで見送る。
(せめて名前だけでも…聞けば良かった)
また来るって言っても彼女のプレゼントとか、だろうし。
あかく見えたのも気のせいだよね。
舞い上がった気持ち、しゅうっとしぼんでいく。
「あの!」
「へっ?」
振り返った先には、さっきの代理の人。
予想外の展開にまた胸の音がおっきくなる。
「俺、あかにしじん、って言います」
「…え、あ、はい」
「迷惑かも知んねぇけど、これ」
差し出された白い紙に、思わず手を差し延べて、
受け取った俺を確認した『あかにしじん』さんは、じゃあと再び立ち去った。
慌ててちぎったような白い紙には11桁の数字。
ねぇ、これってまさか。
立ち去るときのさっきよりずっとあかい耳を思い出して、血が逆流した。
小さなラッキーが続く気分のいい日、
そんな日に見つけた、新しい気持ち。
fin.
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