四 キスで目覚めた姫と王子

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  「いくなぁぁぁっっっ!!」     パチり。視界が急転、目前には白が広がっていました。キョロキョロと辺りを見回して、ようやく状況を把握します。     「最悪の目覚めです……」     背中には大量の汗が滲んでいました。これは出勤前にシャワーを浴びていった方が良さそうです。 もともと余裕のある時間に設定したアラームが鳴った様子もありませんし、シャワーを浴びる程度の時間はあります。 いつもなら二度寝にもつれ込む状況ですが、睡眠時間が少ない割には疲れも眠気も取れてますし、ここは起きて──。     「早起きにしては、なんだか窓から差し込む日差しの量が多い気が……じか、ん、は」     枕元に置いた携帯を開き、汗がタラリと背筋を伝います。これは予感、嫌な方の。     ギギギっ、機械の如きぎこちなさで視線を壁掛けの時計へ向けると、短針は九から上にずれて構えていました。     これはマズイ、いけないです。再び流れる汗は滝のような勢いで。って。     「これ以上流れないで下さいっっっ!! シャワーを浴びてる余裕ないんですから……」     シャワーを浴びる時間というか、そもそも時間が負の値です。     光速とやらに憧れを抱きながら、顔を洗い、着替えを済ませ、携帯と充電器を手に取り家を出ました。     光速どころか音速にも及ばないスピードに嘆く自分を嘲笑うかのように、不幸? は重なります。  
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