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「おいおい風音……またなんかやらかしたのか?」
「いや、なんで自分なんですか? とーやの可能性もあるじゃねーですか」
とーやと談笑しながら朝から騒がしい教室に入ると、まるで空気が凍ったかのように全ての音が雲散霧消しました。
ついでに澄空さんと顔合わせるの気まずいなーなんて懸念も一緒に吹っ飛んでいきました。
それだけならまだ誰かが何かやらかしたんだなーと思い込むことで、許容範囲に収められるのですが。
「熱い視線を集めてるのは間違いなく風音だぜ?」
「とーやの目は節穴ですか? 今回ばかりは自分じゃありません、心当たりがねーです。みんな、とーやが大好きなんですよ性別に問わず」
「性別問わず人気を博しているのは風音だろ……なら試してみるか?」
「えぇ、臨むところです。その自信打ち砕いてやりますよ。そして敗者を笑ってやるんです、自分の席から」
「じゃ、俺もそうするかね」
お互いに頷き合いツツツーとスライド移動をします。さて、敗者を笑ってやりましょうか。
「……あれれー? 予想と大分違う展開になってますよ?」
このあと着席してとーやに飛びっきり嫌味な笑顔をお届けするつもりだったのですが。
視線を集めているのは自分でした。ちょっと何か陰謀めいた何かを感じます、何か。まだクラス替えして二日目ですよ? なんですか、この結束感。仲間外れですか、そうですか。
仲間外れは自分だけじゃなさそうですが。自席から嫌味な笑顔を向けてくるとーやとか、この状況にあたふたと困惑してる龍鳳院さんとか、不在の澄空さんとか。
ともあれ。
「とーや、ちょっと御手洗い行きませんか?」
ビクンっと脈打つ空気。クラスメートの血走った目が怖いです。飢えた獅子のような、いつ飛び掛かってきても可笑しくない目をしています。
自分はこの目を知っています。友人に一人、ことあるごとにこの目をする男がいますからね。
「貸し壱、な?」
「恩に着ます」
肝心な時に助けてくれる親友に感謝して、二人連れ立って御手洗いに向か──。
「ふっ、そうは問屋が卸さないぜ? バカと伊吹!!」
おうとしたところで立ちはだかる影が。
「あ、貴方は……!!」
この影の正体は一体!?
【次ページで明らかになるよ☆】
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