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らしくない雄叫びをあげ、ゼウスは束に飛びかかる。
「私が負ける!?そんなことはありえない!」
繰り出した飛び蹴りはなんなくかわされ、束はその場を飛び退いた。
「逃がすか!」
ゼウスの袖から、二本の鎖が伸びる。
先程放った無数の鎖が、仕込んでいる武器の全てではなかったのだ。
鎖は束の首に巻き付き、容赦なく絞めあげる。
「ぐッ!」
束は手錠を落とし、両手で鎖を引き剥がそうとするが、能力によって巻き付いている鎖はびくともしない。
「・・・ッおお!」
束は再び全身から漆黒の光を放ち、鎖を打ち消す。
「無駄だ」
そう言い放つ束に、ゼウスは拳を振り挙げた。
「死ね!」
ゼウスは束に殴りかかるが、束は屈んでそれをかわす。
そして、右手を手刀の構えに変えて、下からゼウスの腹部を切り裂いた。
「がはぁっ!」
飛び散る鮮血と共に、ゼウスは倒れた。
その体には大きな切り傷。
左の腰から右肩にかけて、対角線上に広がっている。
束の右手を覆う漆黒の空間は、ゼウスの肉を削ぎ取り、消し去った。
ゼウスの体からは大量の血が噴き出し、束に降り注ぐ。
束は血を浴びるが、全身を覆う漆黒がそれを消し去る。
倒れたゼウスを見下ろす束は、能力を解除した。
「てめぇの負けだ」
束は落とした手錠を拾い、ゼウスの手首にかける。
かすかに意識を保つゼウスは、その感触を感じ取り、重度の敗北感に襲われる。
「くそがぁあああ!」
手錠をされながらも、ゼウスは立ち上がった。
不意をつかれた束は、鋭い蹴りで顔面を弾かれる。
「終わったと思ったか?」
倒れる束を指差し、ゼウスは不気味な笑みを浮かべる。
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