思考

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「能力を消す能力者がいては、政府も困る・・・」 ノバがメガネを中指であげながらつぶやく。 「政府が何を企んでいるか知りませんが、私の計画に何の関係もありません。」 そう言うゼウスのもとに、シャンクが歩み寄る。 「なんだぁ?お前も参加すんのかよ。」 ゴードンはシャンクを挑発するように言う。 「フン、何か文句があるのかよ?」 シャンクはゴードンを睨みつけ、手を向ける。 「今はよせ。」 ノークが低い声で言うと、二人は舌打ちをしながらもウルクに向き直った。 ウルクはゼウス達に恐怖し、目に涙を浮かべている。 「あなたにも協力してもらいますよ?」 ゼウスが言うと、目に溜っていた涙が流れ出した。 「き、協力?」 「ええ、ここから脱獄するんですよ。あなたも理不尽な理由で収容されてムカつくでしょう?」 「それは・・・」 ウルクは涙を拭い、押し黙った。 「10秒以内に答えて下さい。さぁ・・・」 ゼウスはウルクを急(せ)かしにかかる。 「そんな・・ちょっと待って・・・」 「あと8秒・・・」 ゼウスは無表情で時間を告げた。 「7・・6・・・」 そして、カウントダウンを始める。 「わ、わかったよ。協力するよ・・・」 思っていたよりも早く、ウルクから答えが出た。 「そうですか。」 ゼウスは笑みを浮かべると、その場を後にした。 「詳しいことはまた後日・・・それまで騒ぎを起こさないで下さいね。」 ゼウスは協力者全員にそう言うと、空いているテーブルに向かって行った。 「騒ぎを起こしてんのはてめぇだろが。」 ゴードンは悪態をつくと、落ちた男の首を蹴り飛ばしてその場から離れる。 ウルクを除くノバ達はため息をつき、それぞれ別の場所に向かって歩き出す。 しばらくして、扉が開き、キャリーと数人の看守が再び食堂に現れた。 キャリーはゼウスを睨みつけると看守達に指示し、三人の死体を運び始める。 そして、昼食時間終了の合図をすると囚人達に手錠をかけ始めた。 「さて、これからですね・・・」 手錠をかけられている途中で、ゼウスはそっとつぶやいた。
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