37433人が本棚に入れています
本棚に追加
/702ページ
「俺の出す漆黒の球体は、あらゆる物を吸い込み消える。吸い込まれた物がどこに行くかは俺も知らない。」
束は床に捨てた手錠を拾いあげると、ゆっくり犯人の方に歩み寄っていく。
「これが俺の能力だ」
束はさらに言葉を付け足す。
「ブラックホールだと?ありえねぇ・・・」
「俺に言わせりゃ髪の毛が針になるのもありえねぇよ」
束は言いながら犯人に近づく。
「そ、それ以上近寄るな!そこから動くな!!」
犯人は慌てて立ち上がると人質達が座る方に後退した。
「動けばこいつらを殺す。この銀行から出ていきな!」
犯人はそう言うと、針になった髪をひとりの女性に近づけた。
女性は目に涙を浮かべて束の方を見る。
「わかったらとっとと出て行け!俺は気が短いんだ」
束は足を止め、犯人を見つめる。
その表情に笑みはなく、犯人に対しての怒りで満ちていた。
「ひとつ言っとくが、能力で人質を傷つけたら・・・命の保証はしねぇ」
「うるせぇ!!!」
犯人は再び髪の毛の針を束に向かって飛ばす。
だが、束は右手に小さなブラックホールを作ると針を全て吸い込んで消した。
「救えねぇよお前・・・」
束は右手に拳を作ると、静かに強くつぶやいた。
最初のコメントを投稿しよう!