接触

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ガオル達が部屋から消えたことで今まで感じていた異世界にいるような感覚が消えた。 ノバはため息をつくと中指でメガネをあげ、タバコに火をつける。 「瞬間移動は、おそらくハリー・ホフマンの能力」 ゼウスは不意に口を開いた。 その内容に、ノバは頷く。 「ガオル・バンスリーの力は風を操る能力。しかし、あの力は不可解ですね」 ゼウスの言うあの力とはラスティの能力のことだ。 他人の能力を見破れなかったことは初めて。 ゼウスの苛立ちは消えなかった。 「キャリー・スターリン」 ゼウスに呼ばれて、キャリーは顔を向けた。 なぜ呼ばれたのかわからないまま、顔をしかめている。 「バンスリーの顔にあった火傷の跡。あれはあなたがつけた傷でしたよね?」 「そうよ」 キャリーは低い声で答えた。 「あのまま戦っていれば、どちらが勝っていたか・・・・・・あなたにはわかりましたか?」 ゼウスの質問にキャリーは押し黙る。 ガオルと戦ったことがあるキャリーだが、そう聞かれると答えはでない。 考えているうちに、ゼウスは再び口を開いた。 「おそらく私達が勝っていたでしょうね」 意外な発言に、キャリーは目を見開く。 「数ではこちらが有利。ガオルの戦力をウィングさんと同等と考えても、私の勝ちは揺るぎない」 言い放つゼウスにはなぜか笑みが戻らない。 「ハリーの能力は戦闘には使えない。ラスティの能力も見破ることができれば問題ない・・・」 ゼウスはまるで独り言のようにつぶやく。 「私達には敵わないとわかっていた。だからガオルはラスティを止めたのでしょうね」 ゼウスは椅子の背にもたれると、足を組んだ。 「頭の切れる連中のようですね。ティタンというのは」 ゼウスは言いながら金属バットを手に取った。 「決めましたよ」 「何をだ?」 不意な発言にノバが尋ねる。 「ティタンという組織・・・SCHと共に、潰してあげましょう。私の機嫌を損ねた罪は重い」 ゼウスが言うと、キャリーを除いた部屋にいる全員が笑みを浮かべた。 戦いはまだ序盤。 そこにひとつの障害が生まれた。 それは束にも、ゼウスにも、襲いかかる脅威となる。
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