始動

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翌日 午前11時37分。 依然、ボロアパートにある部屋にはゼウス達がいた。 ゼウスはいつも通り椅子に腰かけ、何かを待っている。 部屋にはゼウスを含め、四人しかいない。 ゴードンとシャンクは部屋にいるが、他のメンバーはどこかに出かけているようだ。 キャリーは相変わらず、ゼウスの隣にある椅子に縄で縛られている。 手錠をはめられているため、どうあがいても脱出することはできない。 シャンクは窓の外を見つめ、ゴードンは寝室にあるベッドに寝込んでいる。 銀行で受けた傷は、完全には治っていないようだ。 ゼウスが時計に目をやると、部屋の扉が開いた。 「遅かったですね」 ゼウスは扉を開けた者達に言い放つ。 「そう言うな。買い物というのは意外と難しくてね」 ゼウスに言葉を返したのは、手にビニール袋をさげたノバ。 その後に続くのは同じようにビニール袋をさげているノークとヘイル。 三人は部屋に足を踏み入れると、最後に入ったヘイルがゆっくりと扉を閉めた。 そして、ゼウスがいる部屋までやって来る。 「頼んだ物はありましたか?」 机の上に置かれるビニール袋を見て、ゼウスは笑みを浮かべる。 「ボチボチだ」 ノバはそう言うと、袋の中から細長いパイプを取り出した。 不透明なパイプ。 アルミニウムで造られたそれは全長1メートル弱はあり、そこそこの強度を誇っている。 ノバはそのパイプを見つめると、すぐにゼウスに手渡した。 ゼウスはそれを笑顔のまま受け取る。 「こんな物、何に使う?」 ノバは不思議そうな顔をして言った。 それを聞いたゼウスは微笑する。 「私の能力を最大限に生かしてくれるアイテム。と言ったところですか」 ゼウスは言いながらパイプを自分の足元に置いた。 そして、ノークが置いた袋に手をかける。 「あなた方は買い物上手ですね・・・」 ゼウスが笑顔のまま取り出したのは、太く長い鉄の鎖(くさり)だった。
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