始動

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「なっ・・・!」 本部のオフィスでテレビを見ていたゼル達は驚愕する。 何げなくニュースを見ていた三人だが、そこにゼウスが映ったかと思うと次の瞬間、積み上げられた鉄鋼がビルの下に落ちた。 そこで、カメラは壊れたのか今テレビに映っているのは灰色の砂嵐だけ・・・ 三人はとっさに立ち上がるとすぐにオフィスから出た。 ドアの前には入って来ようとしていたのかジャックが立っている。 ゼルはジャックと顔を合わせると顎(あご)でエレベーターを指した。 「ニュース見てたか?」 「・・・ああ」 「行くぜ」 ゼルが言うと、三人はエレベーターに向かって歩き出した。ジャックもそれに続く。 「ジェームズとサラは?」 アビーがジャックに尋ねる。 「・・・資料室」 ジャックは低い声でつぶやきながらエレベーターのボタンを押す。 アビーは携帯を取り出してサラに電話をかける。 ゼウスの起こした事件を知らせる為だ。 「今ので何人か死んだかも」 ルアナが悲しそうな表情でつぶやく。 ゼルは心配そうにしているルアナの肩に手を置いた。 「心配すんなって・・・束も来るだろうし、今日は奴らを倒せるさ」 ゼルは言ってから後悔した。 今の言葉は慰(なぐさ)めになどなっていない。 エレベーターの到着と共に、ドアが開く。 「サラに連絡したから二人と下で合流するわよ」 アビーは携帯を閉じながら言った。 四人はエレベーターに入り、一階を押してドアを閉める。 ゼルはゼウスのとった行動よりも、気になることがあった。 (来るか・・・来るよな) ゼルが心中で自分を納得させている原因は束である。 昨日の束は戦意を失っていた。アルドによってもう傷は癒えてるハズ。 それでもこないならその時は・・・・・・ ゼルは拳を握り締めた。 一階に下りると、ジェームズとサラはすでにそこで待っていた。 「行くぞ!」 ゼルが叫ぶと、六人に増えたメンバーは急いで駐車場に向かった。 テレビに映っていた場所はそう遠くない。 六人はSCH捜査官が犯人護送の際に使用するワゴン車に乗り込むと、サイレンを鳴らしながら現場へと向かって行った。
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