始動

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「どう思います?」 郊外に建てられた廃棄となっている高層ビルの最上階で、ガオル・バンスリーが言った。 そこにはガオルを含め、黒い着衣を見に纏った人間が五人いる。 いずれも全米指名手配犯。 前科150を裕に超える大犯罪者達。 そこはティタンのアジトだった。 ガオルの放った言葉の矛先は、一人の男に向いている。 首筋にまで伸びるのはオールバックにされた大海原を思わせる深蒼の髪。 そして細目の奥の蒼い瞳。 対峙しているだけで恐怖を抱かせる不気味な笑み。 その男はガオルの問いに答えず、ただビルの窓から外を見つめている。 その横にはテレビ。 つい今までゼウスが映っていた。 蒼い髪の男はガオルに振り向くと、さらに笑みを濃くした。 そして口を開く。 「別にどうも、楽しそうな映像だったね」 男は冷たく、重い口調で言い放つ。 「ゼウスという男、あなたより大胆だ。放って置いてよろしいので?」 「何か気になるのかい?」 「奴らは我々の脅威になり化ねないのでは?始末するなら今のうちです」 ガオルは真剣な表情で言う。 しかし男は笑顔を消さない。 「SCHを潰す。その利害が一致してるんだ。今は放って置こうじゃないか」 「しかし・・・」 「そうだ」 男は何か思いついたように手を合わせる。 「手伝いに行ってあげれば?三人くらいで」 キッパリと言い切る男を見て、ガオルは眉をひそめる。 「我らとの戦闘になり化ねませんよ?」 ガオルは震えた声で言葉を返す。 「その時は逃げればいい。戦う理由はないんだし」 「・・・」 ガオルは反論しようとして、すぐに言葉を飲み込んだ。 「手伝ってあげた方が、楽にSCHを潰せそうだ。ってことで行ってきてよ」 「・・・・・・はっ!」 男に言われるがままに、ガオルは従う。 ガオルは黒い仮面をつけると、側にいるハリーに歩み寄る。 「デニス、貴様も来い」 ガオルが言うと、デニスと呼ばれた男は黒い仮面をつけ、ハリーに歩み寄った。 そして、ハリーの能力によって三人はどこかへ消えた。 「いってらっしゃい」 瞬間移動を使った三人に向かって、男はやさしくつぶやいた。
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