始動

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事件現場は戦慄に包まれていた。 屋上から降り注いだ鉄鋼は全部で25本。 それにより、ビルの真下にいた人間は鉄鋼の直撃を受けた。 取材を行っていた記者達も、鉄鋼の下敷きとなってしまっている。 テレビの映像が切れたのは、カメラが鉄鋼に押し潰されたからである。 死者は多数。 負傷者もかなり多く、道路に落ちた鉄鋼により渋滞が起き、救急車もこれない状況だ。 「フフ、ハハハ!」 ゼウスは高い笑い声をあげ、眼下に広がる惨劇を眺める。 聞こえてくるのは悲鳴や叫び声。 そのどれもが悲痛な叫びだ。 ビルの下には何台かのパトカーが止まっており、一般人の避難を呼びかけている。 ゼウスはメガホンを口元まで持ってくると、深く深呼吸し、下にいる人々に向かって口を開く。 『全米に告ぐ・・・』 ゼウスは真紅の瞳を輝かせ、死に絶える人々にその目を向ける。 『能力・・・この言葉の本当の意味を理解できる人達に言います。私の創造する時代に、あなた方を連れて行くと約束しましょう!』 その言葉を聞いている人達がざわめき始める。 『ただし!』 その一言で、ざわめきはピタリとやんだ。 ゼウスは改めて話を始める。 『この私に服従を誓う者だけをね・・・』 ゼウスが言うと、クレーン横に残っていた鉄鋼が第二撃目と言わんばかりに降り注ぐ。 人々はさらに悲鳴をあげて、その場所から避難を開始する。 道路には鉄鋼が散らばっているので、人々は車を使えない。 皆は走って避難する。 目に涙、心に絶望感を抱え、皆一目散に逃げ出した。 『さぁ、新たな時代の始まりです!』 その言葉の刹那、ビルを建設する為の巨大なクレーンが傾き始める。 そしてそれは、音をたてることなくビルを離れ、地面に落下した。 そこで初めてクレーンは轟音をあげ、地響きと共に大破した。 町の人間が次々と逃げ出す中で、SCH六人を乗せた車がその現場に到着した。
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