始動

13/64
前へ
/702ページ
次へ
「あの野郎・・・」 ビルの陰に隠れているシャンクは苛立った口調でつぶやいた。 「バラバラになる可能性がありますだと?最初からそのつもりだったんじゃねぇかよ!」 シャンクは持っていた煙草を地面に落とすと、左足で踏み消した。 「チッ、しゃあねぇ・・・とりあえずは自由にやらせてもらうぜ」 シャンクは独り言のように悪態をつくと、ビルの陰に消えて行った。 「よし、行くぜ!」 ゼルは気合いを入れるように両手で左右の頬を叩くとビルに向かって歩き出した。 「・・・待て」 すかさずジャックがゼルの腕をつかむ。 「なんだよ!」 「・・・考え無しに突っ込んでどうする?」 「知るか!俺はあの野郎をぶっとばさないと気がすまねぇんだ」 「・・・屋上にいるのはゼウス一人。他の連中はビルの中にいるハズだ。一人でどうにかなるもんじゃない」 「じゃあ何か考えがあるのかよ?」 「・・・いや」 ゼルはジャックの手を払い退けた。 「俺は突っ込む。止めても無駄だぜ」 「いいえ、止めるわ」 不意にアビーが言い放つ。 「どう考えてもこれは罠よ。危険だわ」 「わかってるよそんなこと」 「じゃあもっと考えて・・・」 「いつキャリーが落とされるかわかんねぇんだぞ!」 言われたアビーは屋上に視線を移す。 「ビルの中に何人いようが、一人残らずとっ捕まえてやるよ!」 ゼルはそう言うと、ビルの入口に走った。 「待ってゼル!」 アビーが叫んだその刹那。 ゼルの足下に強烈な旋風が炸裂する。 「・・・っ!」 ゼルはとっさに飛び退いたことでそれをかわすが、ビルからは遠ざかってしまう。 「ビルの中には誰もいねぇ」 ビルの前に現れたのはシャンク。 ゼルを旋風で攻撃したのもシャンクだ。 「ゼウスに会いたきゃいけよ。ただし、通ることができたらな」 シャンクは自信満々の表情でゼル達を挑発する。 「上等だぜコラ!」 ゼルはシャンクに向かって行く。 しかし、シャンクに向かって走り出したのはゼルだけではなかった。
/702ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37462人が本棚に入れています
本棚に追加