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「ヘルーダは収容所の中でも、特別に警備が固い。収容されている人間はお前を含めて4人だ。」
「知っていますよ。全部の監房が懲罰房なんですってね・・・助かりますよ。馴れ合うのは嫌いだ。」
囚人はクスクスと笑いながらうつ向いて言った。
束は顔をしかめると手に持っていた資料を机に投げるようにして置く。
「何がおかしい?」
束が尋ねる。心には少しの苛立ちと、多くの疑問が表れている。
「滑稽(こっけい)・・・実に滑稽だ。私が危険?捜査官さん。あなたも私と同類でしょう?」
「なんだと?」
「力を使って何人殺しましたか?それとも、今ここで私を殺しますか?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。お前は塀の中にぶち込まれる、俺は帰る。それだけだ。」
束は煙草を取り出すと火をつけて吸い始めた。
「捕まったのに、えらく余裕だな?お前みたいな奴は初めてだぜ。えっと・・・アーニー レイエスだっけか?」
束は机に置かれた資料を覗き見るようにして言う。
「違いますよ捜査官さん。私の名前はアーニーじゃありません。」
「じゃ何て名だ?」
「神ですよ、捜査官さん。私はゼウスと申します。」
ゼウスと名乗る囚人は、真紅の瞳を束に向けて笑みを浮かべた。
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