ＷＡＮＴＥＤ

勧誘

｢ぐふっ・・・・・・｣

ビンサは膝から崩れ落ちると再び床にうつ伏せになる。
ビンサの首にはフォークによって三つの穴があき、そこから大量の血が噴き出している。

食堂内の囚人達が騒ぎ始め、現場は騒然な空気に包まれた。

その中で、ゼウス、ノバ、ゴードン、ノーク、そしてあともう一人。

この者達だけが動揺することなく、死人と化していくビンサを平然と見つめている。

ゼウスとノバの顔には笑みが浮かんでいた。

ゼウスは舐めていた血のついたフォークを床に落として捨てる。

｢フフフ・・・｣

ゼウスは死んだビンサに背を向けるとノークの方に向かって歩き出した。

それに気づいたノークは顔をしかめると椅子から立ち上がり、ゼウスの前に立つ。

ゼウスはノークについて来るように指示すると、二人一緒にゴードンとノバの側まで戻ってきた。

四人は騒然とする食堂の中、血まみれのビンサの近くで話を始める。

｢で、話って何？｣

ノークは黒い肌のスキンヘッドを撫でながら尋ねる。

｢皆さんは私と同じヘルーダの囚人。ここは平等にことを運ぼうかと思いましてね・・・｣

ゼウスは笑顔で答えた。本人は笑顔のつもりだったが、目だけが笑っていなかった。

｢こと？｣

ゴードンが言う。

｢はい。皆さん・・・ここから出たくありませんか？もちろん私と一緒に。｣

ゼウスのその言葉に、三人は顔をしかめる。

ゴードンがゼウスに質問しようとしたその矢先、食堂の出入口から看守服を着たひとりの女子高生らしき人物が入ってきた。