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「はいそこまで!全員、壁に手をつくか床に伏せて!」
入ってきた女性は食堂の扉を閉めるなり、囚人に指示した。
「これは厄介なのが来たな・・・」
ノバがつぶやく。
それを聞いたゼウスは不思議そうな表情を見せる。
「てめぇのせいだぞ新入り。ったく面倒を起こしやがってよぉ。」
ノバに続くように、ゴードンが苛立った口調で言う。
「何がです?」
ゼウスは何のことかわからず、首をかしげると入ってきた女性を見た。
女性は迷うことなく四人の側まで来るとゼウスを指さして口を開く。
「あんたねぇ、喧嘩で死人を出すってどういう神経してんのよ!?」
女性の指が、ゼウスの鼻先をかすめる。
「とぼけたって無駄よ!全部カメラに映ってんだから!」
「まだ何も言っていませんが?」
「どうせとぼける気だったんでしょ?お見通しよ!」
「・・・」
反論する気も失せたのか、ゼウスは黙り込んだ。
「全く、ヘルーダにはろくな奴が集まらないわね。」
女性は吐き捨てるように言うとゼウスに向けた指を下ろし、再び食堂の出入口の前まで戻って行った。
「彼女は何者なんです?」
ゼウスはため息混じりに尋ねる。
「あいつはキャリー・スターリン。歳はまだ18だがその実力を政府に認められ、この監獄の副看守長をやってる。監獄能力者三人衆の一人だ。」
ノバは右手の中指でメガネのずれを直しながら答えた。
「なるほど。監獄能力者三人衆とは初耳ですね。」
「その名の通り、この監獄で能力を持つ三人の政府側の人間のことだ。はっきり言って奴らの能力はヤバイ能力ばっかだぜ?下手するとヘルーダの囚人よりもな。」
ゴードンは頭をかきながら面倒くさそうに言った。
「同感。」
ノークはつぶやくとその場から離れ、囚人が整列する中に入って行った。
「ハイ!食事終わり!次は自由時間だからさっさと外に出て!妙な真似したら殺すわよ?」
副看守長のキャリーは手を叩くと囚人達に命令した。
囚人達は反論することなく次々に食堂から出ていく。
「なるほど、簡単には出れそうにないですね。」
ゼウスはつぶやくと、食堂から出ていく囚人の列に紛れ込んだ。
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