宣戦布告

4/5
37426人が本棚に入れています
本棚に追加
/702ページ
「神・・・か。せいぜい監獄の中で神を気取るこった。」 束は椅子に掛けてあるコートを取ると、立ち上がって部屋の出口に向かい、歩き始めた。 「じゃあな、レイエス。」 束は言いながらゼウスの肩をポンと叩くとドアノブに手を掛ける。 「違いますよ捜査官さん。」 ゼウスの言葉を聴き、束はドアを少し開いた状態で止めた。 「何がだ?」 束は振り返らずドアに顔を向けたまま尋ねる。 「私は全世界の神になります。こんなちんけな監獄の中じゃなくてね。」 「出所する気か?残念だったな、ここの囚人は更正するまで出られない。ましてやヘルーダの囚人だ。そこらへんの審査は厳しいぜ?仮出所も認められない。」 束はドアノブをつかんだまま言った。顔はまだドアに向いた状態だ。 「誰も合法的に出所しようとは思ってませんよ。」 言い返すゼウスも、机を見たまま束に振り返らない。 互いに背を向けた状態で会話を続ける。 「脱獄する気か?やめとけ、ヘルーダからは・・・」 「出ますよ。」 束が言い終わる前に、ゼウスが言葉を放つ。 「どんな手段を使ってでもここから出ます。そして、世界をひっくり返す。」 ゼウスは振り返り、束を見た。 「楽しみにしてて下さいね・・・」 そこで、束もゼウスに振り返る。 「もし、万が一お前が脱獄することができたなら・・・俺がここに送り返してやるよ。約束するぜ?」 そう言うと、束はドアを開けて部屋から出て行った。 ドアが閉まる音と同時に、ゼウスは再び机に目を向ける。 「楽しみにしてますよ・・・・・・フフフ。」 笑みを浮かべるゼウスは、部屋に入ってきた看守人の手によってヘルーダへと連行された。
/702ページ

最初のコメントを投稿しよう!