救出

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「お前らは二人とも、いかなる状況に置かれても対応できる能力の持ち主だ。解決した事件の数もトップ。こちら側としても、失いたくない人材だ。」 バーナードは机の上に新聞を置くと二人の前に立って言った。 「いや~、それほどでも。」 ゼルは照れながら後頭部を手で擦る。 バーナードはイラッときたが、ゼルがすぐ調子に乗るのはいつものことなので無視した。 「くれぐれも監獄に送られるようなことはするなよ?」 バーナードは真剣な表情で言う。 「わかってますよ。以後、気をつけます。」 束はバーナードの目を見て答えた。 ゼルはまだ照れているのか顔がにやついている。 「よろしい、では持ち場に戻れ。」 「「はい、失礼します。」」 二人はまた声をそろえて言うと立ち上がり、扉に向かって歩いていく。 足が痺れているせいか二人の足取りは重く、なかなか扉までたどり着くことができなかった。 そんな中、署長室の電話が鳴り響く。 バーナードはなんの躊躇もなく、電話を取ると自分の耳に当てた。 「私だが?」 バーナードは電話の主に答える。 二人はまだ扉にたどり着けていない。 その後ろで電話の内容を聞くバーナードの表情が一変し、電話を切ると二人に向き直る。 「ちょっと待てお前達。」 バーナードはあともう少しで扉までたどり着くことができた二人を呼び止める。 「な、なんスか?」 ゼルが尋ねるとバーナードは市内の地図を取りだし、赤ペンで印をつけると二人の側までやってきてそれを渡した。 「仕事だ。ある孤児院で、能力者と思われる女子高生が暴走したらしい。至急現場に向かってくれ。」 「足痺れてますけど。」 ゼルが足を指さして言う。束も無言で頷く。 「いいから行ってこい!」 「「り、了解しやしたっ!」」 束は地図を受け取ると、ゼルを引き連れて素早く部屋から出ていった。 バーナードはため息をつくと椅子に座り、数々の資料を眺めて仕事に戻った。
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