休息

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場に沈黙が訪れる。 ジャックまでもが、未知の食べ物に倒れた。 これの実力は本物だ。 束のゼルは“寿司?”の強さを痛感した。 ルアナとキャリーも、気づいているようだ。 作り方が間違っていたと・・・ 「さて、今のも無しにするかな」 ゼルは箱を持ったままつぶやき、沈黙を破る。 「えへへ、ごめんなさい」 ルアナは苦笑いし、束に頭を下げる。 「あ、あたしも・・・」 キャリーも頭を下げ、未知なる食べ物を生成してしまったことに、詫びをいれた。 「あやまることねぇって。なぁゼル」 「お、おう」 ゼルは軽く言葉を返す。 「アルドもジャックも、舌がおかしいんだよなぁ?」 「そうだな」 「うまそうだもんなぁ」 「あ、ああ」 「じゃあ食え」 「ああ・・・あぁ?」 束の口車に乗せられ、次はゼルが窮地に立たされた。 「うまそうなんだろ?食え」 束はにやけながらゼルに言い放つ。 「こ、このやろ・・・」 ゼルは束を睨みつけ、震える手で寿司をひとつ、手に取った。 ゼルはキャリーを見る。 ルアナを見る。 食べてくれるという期待感ある眼差しを、二人はゼルに向けている。 (く、くそっ!) ゼルは手に取った物を見つめ、脂汗を垂れ流す。 「早くしろよ。――ククッ」 笑いをこらえ切れなくなった束はついに吹き出した。 それを見たゼルの額に血管が浮き出る。 と、その時、このタイミングでジェームズが部屋に入ってきた。 四人の視線は同時にジェームズに向く。 「いいとこにきたな」 ゼルは満開な笑顔を浮かべ、ジェームズに箱を差し出した。 「ひとつ、どうだ?」 「へ?な、なんすかぃ」 ジェームズはジャックと同じような反応をする。 そして、床に倒れているアルドとジャックに気づいた。 「し、失礼しやす」 ジェームズは冷や汗を流し、部屋を後にした。 「逃がすかぁ!」 ゼルはジェームズを追い、部屋を飛び出した。 「ルアナ、コンビニでなんか買って来てくれ」 ため息混じりに束が言う。 「う、うん。ごめんね」 「別にいいよ。また作ってくれ」 「うん。じゃあまたね」 ルアナとキャリーは部屋を後にし、束はなんとか窮地を脱した。 しかし、病院内ではゼルが皆に寿司を食わし、8人を床にうち伏せたという・・・
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