潜入

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ゼウスが一隻の軍鑑を奪ったその二日後・・・ SCH捜査官は、とある港にいた。 能力者政府より、軍鑑を強奪したオリュンポスを攻撃しようとしていた海軍は、圧力をかけられて動かない。 オリュンポスと海軍が戦闘になっては、能力者の存在が露になる確率が高いからである。 あくまで、能力を持つ犯罪者はSCHで始末をつける。 これが今、世界の秩序を保つ中で最も重要は論理だ。 奪われた軍鑑は、港から見える沖に停泊しており、一向に動きを見せない。 SCHから見てそれは、あきらかな挑戦だった。 つまり、誘っているのだ。 自分達はここから動かない。 だから、いつでも乗り込んでこい・・・ そう言わんばかりに、軍鑑は微動だにしない。 そして、SCHはその誘いに応じるべく、軍鑑が見える位置に立っていた。 「遠いな・・・」 ゼルがつぶやく。 サバイバルゲームにて、主に動いていた捜査官が、この港に並んで立っている。 横一列に陣をとり、軍鑑を眺めている。 「最終決戦ってわけか」 ゼルは言いながら、横に立つ束を見た。 束は険しい表情で、煙草をくわえている。 海からくる潮風が、煙草の煙を漂わせる。 「で、乗り込まないのか?」 アンディがそわそわしながら尋ねた。 お気に入りだったカフェを潰され、何度も愛を告白していた看板娘を殺された。 その怒りに、アンディは燃えている。 「・・・オルトロスの二人が来ていない」 ジャックは冷静に言葉を返すと、腕時計に目をやる。 とっくに集合時間は過ぎていた。 「また迷ってんのか・・・」 リュックがため息をつきながら言う。 「怪我は大丈夫なのか?」 束は包帯を巻いたままこの場所にいるロバートに言った。 サバイバルゲームで受けた傷は、まだ完治していないようだ。 「問題ない」 「そうか」 束は煙草を消し、軍鑑を睨みつけた。
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