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軍鑑内にて戦闘が開始されていく。
そんな中で、束は甲板に出ていた。
広い甲板には、砲弾の入った木箱や掃除用具などが置かれており、床には無数の血痕が残っている。
ただっ広い甲板の中央に立っている人物に、束はゆっくりと歩み寄る。
真紅の長髪を潮風になびかせ、真紅の瞳は太陽の光によって輝いている。
一連に起こった事件の主犯。
脱獄不可能と言われた監獄を容易く崩壊させ、ゲームと称した暴挙で多くの人を死に追いやった。
ヘルーダの囚人。
アーニー・レイエス。
又の名をゼウス。
真紅の犯罪者という通り名をつけられ、全米指名手配犯の中でも指折りのトップクラス。
そのゼウスが、束の前に立っている。
その表情には、いつものように不気味な笑みが浮かんでいた。
「ようこそ。時代の狭間へ」
ゼウスは束を見つめ、言い放つ。
「・・・ゼウス」
束は立ち止まり、ゼウスを睨みつけた。
今までの戦い。
その決着は、この場でつこうとしている。
二人の約束が今、果たされようとしているのだ。
「やっと、この時が来ましたね。この瞬間を、どれほど待ち望んでいたことか・・・」
ゼウスは、腰にさしているアルミニウムのパイプを手に持ち、その先端を束に向けた。
「回りくどいことしやがってよ。コラ、まず一発殴らせろや」
束は黒い髪を潮風になびかせ、ゼウスに言い放つ。
眼前に広がる海は、二人の戦いを煽るように波立っている。
「フフ・・・漆黒の捜査官、空良束。あなたはやはり面白い人間のようですね」
ゼウスは笑みを浮かべたまま、束を挑発する。
「全てはこの瞬間の為に、私は全ての準備をしてきました。そして、あなたを殺し、私はさらなる高みへと足を運ぶとしましょう」
「・・・言ったろ?」
束の言葉に、ゼウスは目を細める。
「監獄に送り返してやるよ・・・この俺がな」
「楽しみにしてましたよ・・・」
ついに果たされる約束の時。
犯罪者と捜査官。
二人の戦いが始まる。
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