決戦

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「俺はまだ、自分の能力を理解してなかったようだ」 収束された漆黒の輝きは、黒く煌めいている。 「お前のおかげでそれがわかったぜ」 束は言いながら、ゼウスに手をかざした。 「覚醒したというわけですか」 ゼウスは束の足に目をやる。 重石と鎖を巻き付けてあったハズの足には、何もない。 おそらく封じた能力が戻ると同時に消し去ったのだろう。 ゼウスはそう考え、両手を床に向ける。 その瞬間、甲板の周囲の海から鉄の破片が浮き上がってきた。 それは爆発によって砕けた軍鑑の破片。 それはゼウスの頭上に収束すると、巨大な鉄の塊に姿を変える。 「次は確実に息の根を止めてあげますよ」 真紅の瞳を輝かせ、ゼウスは言い放つ。 「あなた方が全滅すれば、ボートにいる私の味方を解放させてもらうのであしからず」 ボートの隅で拘束されているオリュンポスのメンバー達。 ゼウスはそれを一瞬だけ気にすると、束に向かって手をかざした。 「まずは決着をつけましょうか・・・」 「ああ。俺はそのつもりだ」 ゼウスは最大限に能力を発動させ、巨大な鉄の塊を束に飛ばした。 今までの束には、防げるハズもない攻撃。 しかし、今は違った。 「おおおおお!」 かざした手から、漆黒の波動が放たれる。 それは迫り来る鉄の塊に接触すると、一瞬にしてそれを消し去った。 「・・・な?」 さすがのゼウスも、これには驚愕し、驚きを隠せない。 「だから言ったろ?」 全身に漆黒を纏い、笑みを浮かべる束。 その異様な雰囲気は、ゼウスに冷や汗を流させた。 「マジで覚悟しろ・・・」 束はそう言うと、ゼウスに向かって走り出した。
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