37473人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺はまだ、自分の能力を理解してなかったようだ」
収束された漆黒の輝きは、黒く煌めいている。
「お前のおかげでそれがわかったぜ」
束は言いながら、ゼウスに手をかざした。
「覚醒したというわけですか」
ゼウスは束の足に目をやる。
重石と鎖を巻き付けてあったハズの足には、何もない。
おそらく封じた能力が戻ると同時に消し去ったのだろう。
ゼウスはそう考え、両手を床に向ける。
その瞬間、甲板の周囲の海から鉄の破片が浮き上がってきた。
それは爆発によって砕けた軍鑑の破片。
それはゼウスの頭上に収束すると、巨大な鉄の塊に姿を変える。
「次は確実に息の根を止めてあげますよ」
真紅の瞳を輝かせ、ゼウスは言い放つ。
「あなた方が全滅すれば、ボートにいる私の味方を解放させてもらうのであしからず」
ボートの隅で拘束されているオリュンポスのメンバー達。
ゼウスはそれを一瞬だけ気にすると、束に向かって手をかざした。
「まずは決着をつけましょうか・・・」
「ああ。俺はそのつもりだ」
ゼウスは最大限に能力を発動させ、巨大な鉄の塊を束に飛ばした。
今までの束には、防げるハズもない攻撃。
しかし、今は違った。
「おおおおお!」
かざした手から、漆黒の波動が放たれる。
それは迫り来る鉄の塊に接触すると、一瞬にしてそれを消し去った。
「・・・な?」
さすがのゼウスも、これには驚愕し、驚きを隠せない。
「だから言ったろ?」
全身に漆黒を纏い、笑みを浮かべる束。
その異様な雰囲気は、ゼウスに冷や汗を流させた。
「マジで覚悟しろ・・・」
束はそう言うと、ゼウスに向かって走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!