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翌日
SCH捜査官、空良 束は自分の部屋で目が覚めた。
寝惚けた表情で目覚ましのスイッチを切ると、あくびをしながら洗面所に向かった。
今の時間なら多少ゆっくりしても遅刻することはない。
束は久々に朝を堪能できると思い、少し気分が和らいだ。
寝室のドアを開け、リビングに出る。
「あ、おはよっ。」
束はそこでいったんフリーズする。
テーブルに目をやると二人分の食事が並べられていた。
「どうかしたの?」
「い、いや別に。」
「ふ~ん、変なの。」
今、束の家にいるのは女子高生 ルアナ・ハード。
昨日、廃病院にて束やゼルと騒動を起こした爆音の能力者である。
バーナードの取り調べにより、監獄収容必要無しと判断されたルアナは自分から進んでSCH捜査官になり、今は束の今に居候している。
しかし、ただの居候ならまだしも、昨日ルアナは束の妻になると言い出した。
昨日はなんとかごまかしたが、やがてまた言ってくるだろう。
朝の清々しい気分が一気にふき飛んだ。
まるで昨日、爆音を喰らった時のように。
「さ、食べましょ?今日も仕事なんだし。」
ルアナはウキウキ気分で椅子に座った。
束は一人暮らしだが、客人用に椅子は二つある。
もっとも、テーブルを購入した際に椅子が二つ付いてきただけだが・・・
「ああ。」
束はとまどいながらも椅子に腰かけた。
そして目の前にあるベーコンエッグを口に運ぶ。
「うまいな。」
お世辞ではなく本心だった。
「そう?孤児院で子供達の世話を手伝ってたから料理は得意なんだ~」
「あ、そっか。」
束は黙々と食事を続ける。
「よかった~、不味いって言われたら立ち直れなかったよ~」
「そっか?」
「なんか冷たいよね?あたしお嫁さんなのに・・・」
空良 束、口からコーヒーを噴射。
「ゴホッ!」
さらにむせる。
「あ、何その反応!嫌なの?」
「いや、別にそういうわけじゃ・・・」
束が言葉を詰まらせた時、携帯電話が鳴る。
束は素早く電話を取ると話を始めた。
相手はバーナードだった。
「グッドタイミング署長!」
束は電話に向かって叫ぶが、バーナードは何のことかわからなかった。
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