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どのくらいの間、考えても意味の無い、とてもくだらない事を思案していただろうか。
不意に、ポツリと冷たい何かが手の甲に当たった。
顔を上へ向けると、いくつもの水滴が頬に当たる――雨。
まさか、雨が降ってくるとは思っていなかった。天気予報で降水確率は二割未満だった筈なのに。なかなか当てにはならないものみたいだ。
僕はゆっくりと立ち上がり空を仰ぎ、電柱に寄りかかる。
****
だんだんと強く降ってくる雨。静かだったこの世界は雨音がぶち壊した。今では強弱する雨によって辺りの音は支配されている。
僕は雨に当たらない場所に移動する事も、服などを使って雨を防ぐような事も何一つしなかった。服がずぶ濡れになり、じめじめとした嫌な感触が僕の体中を侵食しつくしていく。このままじっとしていたら、絶対に風邪を引くだろう。僕はそこまで体が強くないし、この間まで入院していたから、もしかしたらとても酷い風邪になるかもしれない。下手をしたら入院生活が更に長引くだろう。
だけど僕は何もしなかった。ただ電柱に寄りかかり、目に雨粒が入るのにも拘わらず暗雲を見上げていた。
ああ。僕は一体、何をしているんだ。
僕がいくら雨に打たれようとも。僕がいくら風邪を引こうとも。僕がいくら辛い目に会おうとも。僕がいくら暗愁の念を抱こうとも。僕がいくら望んだとしても。
この世界は何も変わらないのに。
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