第二章 長門有希参上!

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 ――昼休み、早めに弁当を片付けた俺は文芸部部長(部員が一名なら当然だが)との交渉をするべくまだ見ぬ長門さんの姿を探していた。  長門さんの所属するクラスの奴が言うには彼女は昼休みはいつも一人きりで文芸部室にて食事しているらしい……うん、やはり変わり者なのは間違いない。  しかし俺は今からその変わり者にすら変人呼ばわりされかねない用件で彼女の元へ向かっているのだ、まったく初対面の女子に「不思議なことを探す部活を作るからに部室貸せ」と要求に行くなんて数ヶ月前の俺なら考えもしない奇行だ。  人間なにが転機となり道を踏み外すのか分かったもんじゃない。  なんて考えている内に文芸部室に到着してしまった。  ごちゃごちゃ考える俺はここで終わり。これからはハルヒの協力者としてアホみたいに前向きで身勝手なキョンにならなくてはならない。  とりあえず、まずはノックだ、人間第一印象が大切だからな。 「――どうぞ」  澄んだ声。その声に導かれるかのように俺は部室に足を踏み入れた。 「いや、珍しいね、こんな時間に客人とは。ともあれ歓迎するよ。僕もこの部屋も常に時間を持て余しているからね、ようこそ我が城へ」 文芸部部長、長門有希が長台詞をつっかえもせずに一息で言い切る。 「…………」  俺はというと絶句していた、あまりの衝撃に息もできない。 「なんだい自分からノックをしておきながらダンマリかい?あまり感心はしないな、第一人の顔を見るなり絶句なんて無礼千万じゃないか」  違う、見た目じゃない。いや、確かに長門有希の見た目も俺の予想外だった。髪型はボブより更に短く刈り揃えられていて全身スラリとした起伏の少ないスタイルはドチラかと言えば体育会系をイメージさせる。  眼鏡をかけた顔もそれなりに整っていて是非とも眼鏡を外した姿を拝見したいものだ……って違う!  その見た目以上に俺を驚かせ絶句させたのはその喋り方だ……その昔、いや数ヶ月前まではとても馴染み深かったその口調…… 「佐々木?」  間抜けにも俺は自分が何を言っているのかも判らずに、かつての友の名を口に出していた。
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