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「でも、それって全然涼宮さんのイメージに合わないよね。まさか彼女がネガティブなのを利用して谷口達……」
「馬鹿を言うな!この我を見損なうな!アヤツは何故か告白を断ろうとせんのだ、まったく何人の男がキャツに煮え湯を飲まされたことか!」
「なんだ、涼宮に散々なにか奢らさせた後に捨てられたのか?」
「違う、断らんくせに何もせずに別れる。男には理由がさっぱり解らん、だから奴は変人なのだ」
「しかし信じられないな、あの涼宮さんがね……」
「ハッ、女なぞ得てしてその様な物だ。それに涼宮とて昔から今の様だった訳ではない」
「昔は普通だった訳か?」
「普通以上だな。さっき言った様な奇行が常人に出来るものか」
「つまり涼宮は……」
「ああ、異常にポジティブで前しか見ていない様な女だった」
少し想像してみる勝ち気でどんどん俺を引っ張っていくイケイケな涼宮ハルヒ、その姿は思った以上に美しくて……
「結局奴は挫折したのだ。アレだけ探求し夢に見続けた『非日常』を自ら捨て去ったのだ。我ならばその様な無様は見せん、必ずや目的を捉えてみせたものを!」
そう語る谷口はなぜか少し淋しそうだった。
――その時、涼宮ハルヒの過去を思わぬ形で突きつけられた俺は……
ただ――嬉しかった。
自分の知らない涼宮ハルヒを知っている人間が居る、東中の奴はクラス中に結構な数が居て俺が知らない涼宮ハルヒを見て、涼宮ハルヒと話していた。
それが悔しくないと言えば嘘になる。しかし谷口は知らない、いや谷口以外の奴も俺以外は知る筈がないのだ、涼宮ハルヒがまだ諦めてはいないことを。
俺は知っている俺だけが知っている涼宮ハルヒの『今』それは俺が知らず谷口達が知る『過去』に比べ何千倍の意義があるものだ。
涼宮ハルヒはそのポジティブだった自分を失っても『非日常』を捨ててはいなくて……一緒に探せるのは俺一人だという事実が――俺にはたまらなく嬉しい。胸が高鳴る、そうコレこそがハルヒと俺が共有した一番最初の二人だけの秘密だったのだ。
「キョン、キョン!貴様戻ってこんか!」
「ぬわ!なんだ谷口どうした?」
「貴様、人が話しているにも関わらず……まあ良い我が言いたいことは一つだ涼宮に関わるな。以上だ」
谷口悪い、多分それ無理だわ。
かくして俺は今日も涼宮ハルヒに話しかけている。
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