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声を掛けると物凄い勢いで言い訳を始めた。そんなに照れなくてもいいのに
「……というか、おんしは誰じゃ?」
そういえば、こっちが一方的に知ってるだけだった。ボクが名乗る前に番長さんは服に付いた校章に気付いたみたい
「七咲のモンか……」
番長さんは目を細め暗い表情になる。大分落ち込んでるらしい
「無様を見せたワシを笑いに来たんか?」
自重気味に笑い、じゃれついてきた子猫を指で撫でる
「喧嘩を売っておいてあっさり返り討ちじゃ、情けない」
「先輩はチートですから。あんまり気にしちゃ駄目ですよ」
「チート、か……ワシの『能力』もアヤツに簡単に敗れてしもうたしのォ」
「……それは違いますよ」
思わず否定していた
「先輩は間違いなくチートキャラですが、でも〝簡単〟な訳、無いです」
怪訝そうな顔を向けてくるが、構わず続ける
「先輩は迷惑な程〝正義の味方〟で、ふざけた程強いけど……それはあの人が努力して、努力して、努力した結果手に入れたモノなんですよ」
性能もさることながら、あんなに強くなるまで努力出来る事自体チートなんだ。別にボクはあの人を庇う訳じゃない。けど誤解は解いておこうと思う訳で
「番長さんが負けたのはその『能力』を過信して努力を怠った。ってだけの差だと思う」
番長さんは少しの間ポカーンとしていたが、俯き体を小刻みに震わせ始めた。……やば、怒らせちゃったかなぁ
「がっはっはっは!!」
うわぅ!びっくりした!急に笑い出した番長さん。大爆笑である。ボクそんな笑わせる事言ったかな
「あの、番長さん?」
「まったくその通りじゃ!」
大声で笑いながらボクの肩をバンバンと叩いてくる。…痛いんだけど
「ワシは慢心しておった!自分を磨かず『能力』に頼るだけで、努力する事を忘れるなんてのォ!」
がっはっはと笑う番長さんは決心した目で、すっくと立った
「こうしちゃおれん。ワシは修行の旅に出る」
この人も極端だなぁ…落ち込んでるより良いけど、元気になり過ぎたかもしれない
「おんしのお陰でワシは先に進めそうじゃ、ありがとうのォ」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。色んな意味でくすぐったいなぁ
「あ、そうだ。番長さん」
「ん?なんじゃ?」
ボクはカバンからノートを取り出して言った
「サイン下さい」
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