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「エリアってば、本当に……お馬鹿さんだよねぇ」
ヴァンは笑顔を絶やすこと無くエリアに話しかけてくる。エリアはその笑みに僅かな不気味さと恐怖を感じているのか、青ざめた表情の彼女の額には汗が伝っていた。
後ろから聞こえていた足音の主は二人に追いつくと、殺気立つエリアに構うことなく彼女を横切り、ゆっくりとした歩みでヴァンの横に並んだ。男は右手で自身の短く無造作な黒い髪を強く掻きながら、苛々したようにエリアを睨むと、大きく溜め息を吐き、口を開く。
「精霊番号C─02を魔導石から開放。その後、封印錠の鍵を奪い、周りに居た研究員及び警備隊に対しての攻撃……後逃亡。よくもまぁ、やってくれたな」
「エリアが悪戯っ子だったなんて僕知らなかったよぉ」
「ああ、悪戯っ子には悪い事をするとどうなるか、キチンと教えてやらねぇと」
男はそういうとエリアの右手に光る鍵を見つめながら、自身のズボンのポケットを探る。そしてエリアの持っている物と酷似している緑の石を取り出すと、何やら詠唱を始め、やがて静かに言葉を呟いた。
「おら、解放だ」
男は石を握りしめたままの右手を前に突き出す。すると右手が赤い光を帯び始め、緑色であった筈の小さな石は男の身長と並ぶ位の大剣となり、男の手に収まった。
男は剣を構えエリアを見据え、呼吸を整える。エリアも覚悟を決めたのか、一つ大きく息を吐くと、男を見つめ同じく武器である杖を前に構えた。
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