1

3/12
前へ
/51ページ
次へ
 季節は夏――――今回、三度目となる転校をする少女は、      佐原南美      <サハラ ナミ>  今年十四歳を迎えたばかりの中学生である。 まだ教科書を入れていない平たい鞄を持ち、門を越えようとすると、後ろから母親が最後に声をかけた。   「――――気をつけて」  何かを予期させる、重たい声に南美は吹き出す。 あの過保護学校で、気をつけるも何もないと思ったからだ。  それというのも、今回南美が転校する学校では、入学前から全生徒の学校までの道筋を把握しているのは勿論、 発信機付きの腕輪を付けるのを義務づけており、 卒業するまで外す事が出来ないようになっている。 つまり、学校外でも 全校生徒の居場所を特定、 さらには監視する事も出来るという訳だ。  この待遇から、全国の過保護な親から絶大な支持を得ているが、 何故か 推薦でしか生徒を入学させない 事で有名である。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加