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 これからの学校生活を憂いながら、南美が学校の門までたどり着くと、 後ろから明るい声が聞こえてきた。 「おはよ!  いつも通り暗いな!」 「今日は遅れなかったんだね」  黒い短髪から覗く、つり目を細くし、明るい笑顔で南美の肩を叩いた少年は首を傾げた。  「いつも俺、早いじゃん」   「まだ寝ぼけてるの?」  笑顔をひきつらせた少年が若干落ち込んだ顔になる前に 南美はさっさと校舎の方へ向かう。      新田 透      <ニイダ トオル> この少年は、南美と同い年で、身長は南美より拳一つ分高く、華奢だが無駄のない体つきをしている。 ‘護衛’として南美の母親に雇われ、南美に付き、同じく転校を繰り返している少年だ。 雇うといってもお小遣い程度の金額で、そばにいるという形だけの護衛だが。  校舎へ向かう南美を慌てて追いかけた透は南美の腕を見て叫んだ。 「腕輪は?  無いと校舎入れないぞ」  透の呼び掛けであっと声を上げ、南美は渋々、赤い校章の入ったシルバーの腕輪をつけた。 南美は首輪のような気がして、ぎりぎりまでつけたくなかったのだ。 対する透の腕輪の校章は紫だったが、性別で色が違うのだろうとあまり気に掛けず、再び歩き出す。
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