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「紗弥くん…」
俺はゆっくりと近付いた。
相変わらず綺麗な容姿…
規則正しい寝息をたてていて、ちょっと触ったくらいじゃ起きないと思った。
「…紗弥起きる」
「大丈夫…」
呟いて、手を伸ばす。
須賀はもう何も言わず見ているだけだった。
指先に、髪…そして肌の感触が…手のひらから、紗弥くんの体温を感じる。
ついこの間まで、こんなの当たり前だと、すぐ近くにあるものだと思っていたのに…
今はこんなにも遠い…
こうやって触れるのに、すごく勇気がいる。
ドキドキと、自分の鼓動が大きく速くなっていっているのがわかった。
あぁ…やばい……
抱き締めたい…キスしたい…
もっと触れたい…
欲望が膨らむ。
離さないと、はやく…手を……
「…紗弥くん…」
いつの間にか、紗弥くんの顔が間近にあった。
俺は、無意識に顔を近付けてしまっていた。
それを、須賀が俺の肩に手を置いた衝撃で制止された。
「ダメ」
「……」
「起きる」
わかってたのに…、…本当やばいな…俺……
「ん…」
「!」
薄らと開かれる瞳、漆黒の大きな綺麗な目が俺を映して認識すると、信じられないものを見るように大きく開かれた。
「…え…」
「…っ」
ごめん、逃げる。
俺は、保健室を早足に去った。
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