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「何でこうも傘がないんだろ…」 俺はぶつぶつ文句を言いながら待ち合わせ場所に帰っていた。 たかが傘、されど傘と言ったところか俺が傘を買えたのは三件目のコンビニだった。 一、二件目は売り切れもしくは置いてないのか見当たらなかった。 かなりの時間を傘に費やしたよ…もしこの間に紗弥くんが来てたらどうすれば…… そんな予想が当たってしまうなんて…、遅刻しそうになったり、待ってる間逆ナンされたり… 今日は運に見放されてんのかな? 辺りは急に激しくなった雨でびしょ濡れだった。傘差さないでいたら数秒でアウト。 あれだけ多かった人も今じゃ遠くに一人二人だ。 そして待ち合わせ場所の噴水には 「…良かった、来てない」 来てほしいのに、今は来ていないことに安心している。 こんな雨の中じゃな… だが、そこでふと思った。 …俺がいない間に来て、俺がいなかって帰ったとしたら…もしかしたらまた近くにいるかも…… そう思ったら早かった。 俺はすぐに紗弥くんを探すために再び待ち合わせ場所から離れた。 ……まぁ…そう簡単にはいかないわな…息が切れる程探し回ったが、紗弥くんの姿は見当たらなかった。 …来てなかったか…… とぼとぼ雨で濡れた足を見ながら噴水に戻ると、俺はこれでもかという程に目を見開いた。 だって、今俺の前にいるのは… 噴水の縁に腰を下ろして雨に濡れているのは… 「紗弥くん」 近付いて、傘を差出し声を掛ける。それに反応して上げられた顔… …紗弥くんだった。      
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