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ま、それはわかってたことだし…仕方ないよね……
とりあえず何とか安心させて紗弥くんを浴室に連れて行った。
シャワーの音がしてやっと自分から安堵の溜息が洩れる。
浴室で倒れられちゃ困るしな…
俺は紗弥くんの服を乾燥機に入れてベッドに座った。
室内は暖房が効いていて、自分の服は乾燥機を使わなくても自然に乾いていた。
タオルで髪を拭いていると、室内の暖かさと微かに聞こえるシャワーの音が心地よく感じて緩い睡魔に襲われる。
気付いたら俺はベッドに横になって眠っていたらしい。
まさか、そういう方法で起こされるとは思ってなかったけどね…
温かい、よりはちょっと熱めな柔らかいものが俺の唇に何度もあてがわれる。
時折唇を濡らされ、またあてがわれ……俺はその感触を良く知っていた。
紗弥くんにキスされている。
…正直嬉しい、でも……
多分これは…先のことを考えていないキスだ。自分だけが満足するためだけの行為。
わかってるから、虚しくなっちゃうよ…
「誘ってるの?」
そう言って目を開けると案の定…
やっちまった…みたいな顔やめてよ…また俺が一方的に嬉しいだけじゃん…
何とか理性を落ち着かせて、まだちゃんと拭けていない紗弥くんの髪を拭いてあげる。
その間も、君は俺を誘惑するんだ…それも無意識に……
俺の冷えた手が君に触れる度に、気持ち良さそうに目を細める表情とか…熱い身体とか……
「…紗弥くんは悪魔だ…」
そんな俺の独り言は、君の耳には届かなかったようだね。
そして、俺はやってしまった。
これこそ気付いたら…
紗弥くんを押し倒して…自分の欲望のままに気持ちをぶつけて…
また、泣かせちゃった…。
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