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「…ごめんね」 その涙を見て理性を取り戻せた。 とてつもなくゆっくりとした動作で紗弥の上から退く。 その間に紗弥くんの涙は止まったようだ。 俺の態度が急に変わって驚いたのか、紗弥くんは俺から離れることはなく逆に不思議そうに顔を覗き込んできた。 あぁ、もう… 紗弥くん可愛過ぎるよ… 今やっと抑えたのに、また元気になっちゃうじゃんか…… そんなことを思っているのを知らない紗弥くんは、まだ俺から目を逸らさない。 そして、少しだけ目を伏せた後、また俺に向き合った。 「…あのさ…」 「ん?」 「謝るの、俺の方だから」 その言葉に、意味がわからないという表情をする。 紗弥くんが謝る? 何のことか俺にはさっぱりだ。 「……遅刻、して…ごめん」 「…?……あぁ!」 納得。 そう言えば俺、紗弥くんに三時間待たされたんだ… 来てくれた喜びが大き過ぎて忘れてたよ… 「本当は、ちゃんと時間通り来てて…ただの言い訳にしかならないけど……遅刻するつもりなんてなかった…ごめん…」 軽く頭を下げて謝る姿に、俺はもう遅刻したことなんてどうでもよくなっていた。 てか最初からあんまり気にしてなかったし…… 「大丈夫、気にしてないから…来てくれたことに意味があるから」 そう言って紗弥くんを抱き締める、少し戸惑いがちだが応えるように抱き締め返してくれたのが嬉しかった。    
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